こんばんわ。
さて、今回は妊娠と出産について書きたいと思います。このブログは男性の育休について書くブログではあるのですが、いきなり妊娠まで遡ります。
昔のことをどんどん忘れていくので、過去から振り返る事に優先度を置いてみようと思ったのと、過去の私を含め、『妊娠』という事実を、『精子と卵子がくっついて、嫁さんがのお腹が大きくなり、つわりでしんどいんだよね。大変そう。』位にしか捉えきれていない男子諸君に、『ある理由』があって、どうしても伝えたい『妊娠の恐怖』について書きたいと思います。
育休の話でもなく、私の育児経験の話でもありませんが、お付き合い下さい。
※個人的な理由から相当アツくなってしまいます。また、脅かすような文体になっていますが、何卒ご容赦を。
育児への理解は妊娠・出産から
男性の育児への理解不足という事が良く言われていますが、私は問題の本質は、育児より手前の、妊娠(場合によっては妊活)・出産からだと感じています。
私は妊娠は簡単にできると思っていたし、妊娠・出産も『この日本でうまくいかないわけはない』と思っていました。
ちょっと重い話ですが、実際は、妊娠・出産は想定外のリスクが常に付きまといます。
しかも普通のリスクではありません。不妊、障がい、流産、死産、妊産婦死亡、こうした『とてつもないダメージを負う』リスクは挙げればキリがありません。
妊娠・出産は生命の生と死が背中合わせに存在し、これまでの人生で感じたことのない言いようもない不安と戦う必要があるのです。
それを、僕ら男性は、妻一人に背負わせてないでしょうか。あるいは、社会はその『恐怖』を『わがまま』と冷たく突き放してないでしょうか。
論理的データでは受け止めきれないリスクと向き合うということ
突然ですが、いくつか統計データをご紹介します。
不妊治療の受診率 18.2% (『第15回出生動向基本調査』国立社会保障・人口問題研究所、平成28年10月)
特定不妊治療の助成件数 約15万件(平成25年、厚生労働省)
妊娠初期における流産の発生率 15%前後 (日本産婦人科学会)
妊娠後期における流産(死産)件数 約2,800件(『平成28年人口動態調査』厚生労働省)
妊産婦死亡件数 36件(10万人に3から5人) (『平成28年人口動態調査』厚生労働省)
例えば、日本では5.5組のカップルに1組の割合で不妊治療を受けています。妊娠初期の流産は15%程度の確率でおきていると言われ、多くの場合原因も不明だそうです。妊産婦死亡も年間で30名程度あるそうです。
まず、この数字を見て『実感よりも多い』と思いませんか?そう、誰もこうした『影』の部分を『オモテ』にしない*1だけで、実は隣の同僚や職場の女性が現在進行形で辛い経験をしている可能性があります。そして、あなたの奥様も、もしかしたら怖がっているのかもしれません。僕ら男性は、それに気がついているでしょうか。
統計データを事実として知っておくに越したことはありませんが、じゃあこうしたリスクと『向き合う』となると、ほとんど意味が無いと私は思います。
なぜなら、生命の当事者にとって何%とか、理論的説明とか、一般論は何らの慰めにならないからです。こんなデータや説明をいくら検索しても不安や痛みは解消されるものではありません。
男性は、一般的に物事を理論的に捉えようとしがちです。が、私たち男性は医者ではないのです。妻や近しい人に対して旦那(男性)に求められるのはパートナー(サポーター)として寄り添う、あるいは向き合うことだと思います。『向き合う』とか『寄り添う』いうのは、『客観的』ではなく正に『自分ごと』として捉えようとする努力や姿勢だと私は思います。
想像してみてください。
授かった命、心拍も聞こえているし、エコーでも元気に心臓が動く様子が見えていた。
なのに、突然、その命の音が『あなたの』お腹の中で消えていく。そして、体外に『排出』される。
その時、あなたは『妊娠初期に15%の確率で起こる珍しくない現象で原因は不明』と説明されて受け止めきれますか。納得できるでしょうか。
そんな辛い経験をする人が、15%もいるんです。
なぜ男性が無理解なのか
なぜ男性が無理解なのか、いろいろ要因があると思いますが、私の場合はこうでした。
まず、妊娠・出産についての基本的な知識すらなかった。保健の授業で習ったことで覚えているのは、卵子と精子がくっついて細胞分裂を起こすことだけです。
また、こうしたリスクをよく知らなかった。不妊や流産等はデリケートな話であるがゆえに、おそらく女性同士でも話題に上ることが少ない話です。いわんや、ネットの炎上記事以外で、男性がこうした話題に『実感を持てる距離』で触れることは、ごく稀でしょう。結局、ニュースや新聞の中での出来事に過ぎないのです。
さらに、女性自身にとっても実は『未知の恐怖』であるということを知らなかった。妊娠・出産は女性の体で起こることで、女性は自分の体についてよく知っているはずだから任せればよい、男性である自分は何もできないと思っていたのです。『妊娠したんだ、じゃあ後よろしくね。』位な気持ちです。
でも、女性にだってわからないことは沢山あるようです。だから、ネットには沢山の不安が溢れているし、あまりに大きいリスクを背負うわけですから、医者の言っていることすらもなかなか信じられない妊婦さんもいるのです。それ位、不安だって事です。
最後に、やっぱり体の変化がないことです。女性の場合は身体的な変化だけでなく、ホルモンの分泌すら劇的に変わっていくわけで、おそらく『気持ち』の部分でも準備とか覚悟が段階的に決まっていったりするんだと思います。どうしても、100%女性と同じ気持ちになることは難しいと思います。
男性の立場に立てば、男性の無理解を一方的に責めても仕方ないような環境だと思います。
じゃあ、旦那はどうすればいいのか、妻はどうすればいいのか。
私なりの答えは、『一緒に検診に行く』(超おすすめ)とか、『妊娠に関する日常会話としっかり聞く』とか、『早く家に帰る』とか、そんな普通のことです。
旦那は知らないんだったら、知ろうとする、妻は知ってほしいなら、話をする。楽しい話を共有するように、不安な気持ちを100%共感できなくても、知ろうとする。それが多分、僕らにやれることなんだと思います。
『ある理由』
私は冒頭、『ある理由』と書きました。
実は、私は今回取り上げた妊娠のリスクに実際に遭遇しました。詳しくは書きませんが、私は検診に妻を1人で行かせて辛い診断をたった1人で聞かせてしまった事を悔やんでいます。また、その時、何も言ってやれなかった事も。今でも何が正解だったかは分かりません。私は自身も、その事実を受け止めるというより、受け流すことが精一杯でした。
『当たり前』と思っていることが『当たり前でなくなる』ことが起こり得る、その認識と覚悟だけは待っていてください。私と同じ後悔をしないように。
正直、知ったところで経験した人にしかわからない辛さや大変さがあります。どれだけ勉強しても注意を払っていても回避できないリスクもあるし、実際に当事者になった時の気持ちなんて、容易に想像できるものではありません。当事者も、周囲もコントロール出来ることばかりじゃない、どうしようもないこともあります。
無事に出産した奥さんは、こういう怖い思いをして赤ちゃんをこの世に産み落としたことは、同じ男性としてやっぱり旦那さんは知っておいて欲しいなと思います。
産後は、育休とる取らないは別としても、『親が手伝いに来るから』と言わず、やっぱり旦那として妻を支えてあげるのが男気じゃないの?、と私は思います。
育児も多分、『怖い』
当初、このブログのメッセージの一つに、『妊娠、出産、育児は教科書通りには行かず、理論的に捉えることに限界もある』を掲げました。
私は妊娠・出産は乗り越えて、今育児のフェーズなのですが、多分まだまだ『不安』は続くんだろうと思います。むしろこれからなんですよね。
先輩ママの上司から、『親が心配をすればするほど、子どもは大きく成長していく。』と言われたことを今思い出します。子どもは親の不安を食って成長するらしい。
マニュアル(育児書)通りにいかず、悩んだり怒ったり落ち込んだり、でも試行錯誤しながら日常を過ごすという意味で、育児も妊娠・出産も同じ『不安』とのお付き合いなのかな、と思い始めています。
新米パパの私にはまだよく分かりませんが、コントロールできないこと、どうしようもないことも含めて、夫婦で『不安』とうまく付き合って、どっしり受け止められるような度量が付けられるようにやっていければと思っています。
ちょっとアツくなりましたが、今回はここまで。
*1:ただし、ネット上にはこの類の話は多くある。現実世界の影がネット上では光を浴びる。